理事長挨拶

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南風原朝和(東京大学名誉教授/広尾学園中学校・高等学校校長)

 

2020年9月25日に開催された日本テスト学会理事会で,第4代の理事長に選任されました。初代の池田央先生,第2代の柳井晴夫先生,そして第3代の繁桝算男先生の後継となります。はなはだ微力ではありますが,これから3年間,どうぞよろしくお願いします。

この2020年という年は,テストの関係では,大学入試センター試験が31回目の実施をもって廃止となり,次年度から大学入学共通テストに変わるという大きな節目となりました。そして,この変更に至る過程で,大規模試験に記述式問題を導入したらどのような能力が評価できるようになるのかとか,記述式問題の採点は誰がどのように行うのが適切か等の議論が展開されました。また,民間の英語資格・検定試験を共通テストの枠組みで行うことの適否や,異なる資格・検定試験の成績間の対応づけの問題についても新聞等で大きく取り上げられました。

この年はまた,新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい,学校教育にも大きな影響を与えました。長期間にわたってオンラインによる授業が行われ,成績評価も一部,オンラインで行われる中で,コンピュータやネットワークを利用したテストの技術,そして,今後予定されている大学等の入試を含め,オンラインでのテスト実施におけるセキュリティの問題が注目されています。

テストをめぐるこのような社会情勢の中で,「テスト理論」という言葉や,さらに具体的に“IRT”(Item Response Theory, 項目反応理論),「等化」といった言葉がメディアで登場するなど,学問領域としてのテスト学の認知が次第に広がってきたように思います。そして,テストにまつわる様々な問題を解決するために,テスト学の専門性に対する期待や要請も高まっているように思います。日本テスト学会は,理論から実践にわたるテストの専門家の集団として,そのような期待や要請に応えていく責務があります。理論を究め,新たな技術や評価手法を開発するだけでなく,テストに関する社会全体の理解,テスト・リテラシーを広げ深めていくことも重要な責務です。

あらためて指摘するまでもなく,テストの活用は上述のような教育関係だけでなく,企業における人事アセスメントや,国・地方公共団体の採用試験,各種の国家試験など,きわめて広範にわたります。また,テストに関する研究の内容も,歴史研究,国際的な制度比較研究,公正性に関する哲学的研究,人工知能を活用した採点技術の開発など,いわゆる文系理系という枠をはるかに超えた,まさに総合科学です。そのような総合的なテスト学の発展,そしてその成果の社会への還元に,今期の理事,各種委員会委員,事務局,そして会員の皆様と力をあわせて貢献していきたいと考えています。ご協力のほど,どうぞよろしくお願いします。