ご挨拶

 新型コロナウイルスの影響で、第19回大会がオンライン開催になりましたが、2022年4月段階で収束が見えない中、記念すべき第20回大会もオンラインで開催することになりました。会期は8月26日(金)〜9月4日(日)の10 日間です。貴重な会員交流の場、研究成果発表の場が2年連続でこのような形での開催となりましたが、大会実行委員会では万全の準備をして参りますので、ご寛恕いただければ幸いです。

 新型コロナウイルスの流行が始まって2年ほど経ち、これまでテスト関係者、特に、運営に関わっておられる会員の皆様は、その実施に向けてご苦労があったのではないかと存じます。公的試験や企業などの採用試験などで、テストセンター形式などの集合形式で運営しておられるテスト関係者の方々や、対面で面接を実施しておられたテスト関係者の方々は、そもそも人が集って実施できない状況が続く中、感染症対策に追われたことと存じますし、大学入試では、オープンキャンパスのオンライン実施に始まり、試験当日の感染者、濃厚接触者の受験者への対応、また、大学院入試では、留学生などが来日できない中、急遽、オンライン実施への切り替えにご苦労された関係者の方も多かったのではないかと存じます。その中で、CBTなどのこれまで実施に二の足を踏んでいたテスト実施方法についても、それを受け入れる風土や、デバイスの普及も進んできたのではないかと拝察致します。コロナ禍に端を発した社会の変化ですが、テストを巡る状況については、隔世の感がする次第です。こうした社会状況においては、テスト理論やテスト運営の観点から、日本テスト学会としても会員の叡智を集めて情報を発信し、学会のプレゼンスを高めていく絶好の機会であると考えます。

 そのような社会状況の中、本大会のメインテーマは、「学際的に課題解決するテスト学」です。テスト理論を専門にする会員を中心にテスト運営にも携わる様々なテスト関係者が集う本学会の特性を活かして、現代テストが抱える課題の解決への方策を学際的に積み重ねることを目指す大会としたいと思います。本大会では、3 つのシンポジウムが企画されています。1 つ目は、テスト学会としては従来あまり取り上げられてこなかった、テスト項目の著作権と問題公開/非公開に関するテーマで、公開シンポジウムを企画しました。2 つ目は、研究委員会が企画する学力テストの本質を改めて見直すシンポジウムです。筆記テストは本当に「古い」のかという問いを出発点に、「育成すべき資質・能力」を筆記による学力テストで評価するために、どのような工夫がなされているのかについてご議論いただきます。3つ目は、大会実行委員会が企画する、テスト学におけるオープンサイエンスに関するシンポジウムです。研究結果の再現性の低さや疑わしい研究実践(QRPs:Questionable Research Practices)を巡る他研究領域の先進事例を伺いながら、テスト学におけるオープンサイエンスのあり方についてご議論いただきます。これら3つのシンポジウムはリアルタイムで、9月4日(日)に開催されます。また、会期中の10日間、企画セッション(一部を除く)、一般セッションは、オンデマンドで実施されます。

 本大会はオンライン大会となりますが、実行委員会としては、オンラインの特徴を活かし、これまでテスト学会と縁のなかった人たちにもご参加頂き、テスト学の必要性を認識していただくことを目指して、努力したいと考えています。ぜひ、テスト学会大会に参加していただくようお願い申し上げます。

日本テスト学会第20回大会実行委員長
木村拓也(九州大学/大学入試センター)