以下の基調講演・シンポジウム・企画セッションの開催を予定しております。
開催日時:9月8日(木) 午後
講演:ETS首席研究員 Paul Deane 博士
この基調講演では、ETS首席研究員のPaul Deane博士をお招きし、氏が携わるCBAL(Cognitively Based Assessment of, for, and as Learning)イニシアチブを通して、認知科学を基礎とした次世代型のアセスメントについてお話いただく。
CBALイニシアチブは、米国における現行のK-12のアセスメントを、「学習への貢献」を強く意識した次世代型アセスメント・システムへと変革するための研究プロジェクトである。その特徴は三つある。一つ目は、社会的文脈における学習と習熟を考慮した言語の「認知モデル」を構築していることである。認知モデルに基づいてアセスメントを設計し、評価を行うことで、学習の到達状況に即したきめ細かなフィードバック、指導が可能になることが期待される。二つ目は、相互に関連づけられた形成的評価と総括的評価を年間にわたって複数回行う「アセスメント・システム」を構想していることである。三つ目は、コンピュータ上での試験実施や機械採点など、最新の技術を積極的に活用する点である。
本講演では、認知科学に基づくフレームワークを、どのようにして具体的なアセスメントタスクに落とし込み、測定し、評価するのかといったCBALの具体的な手法について、これまでの研究成果を交えながら紹介していただく予定である。
司会:ベネッセ教育総合研究所 加藤健太郎
備考:同時通訳有り
企画者:植野真臣(電気通信大学)
開催日時:9月8日(木) 午前
近年,テストの国際標準ISO規格(ISO/IEC 2007)で定義されるeテスティングが世界的に普及しつつある.しかし,同一テストの測定精度の等質性を保証しなければならないeテスティングでは,大規模なアイテムバンク(テスト項目のデータベース)と高度なコンピュータ技術が必要であり,その運用方法については未だ確立されていない.また,アイテムバンク方式が普及している西洋とは違い,日本ではこれからそれを構築する組織が多い.そのため,容易に導入可能なeテスティング・システムの開発とアイテムバンクの継続的構築も考慮した運営モデルの開発が急務である.本シンポジウムでは, すでに大規模型eテスティングの実施を進めてきた方々にそれぞれの組織での運用方法についてご発表いただき,大規模型eテスティングの運用モデルを明らかにしていく.
登壇者:
谷澤昭紀 (IPA 独立行政法人 情報処理推進機構)
国家試験『ITパスポート試験』におけるeテスティング
ITと経営、そして増々重要性が高まる情報セキュリティなど、社会人として必要な知識を総合的に問うITパスポート試験は、平成23年11月に、それまでのペーパー方式から、いつでも・どこでも受験できるCBT(Computer Based Testing)方式に切り替え、現在に至っています。CBT切替え以降32万人を超す(平成28年4月時点)応募者を誇るこの巨大なeテスティングについて、CBTの導入検討、テスト設計(IRTの導入やアイテムバンクの設計等)、そして導入プロジェクトを経て現在の運用に至るまでを、経験談を交えながらご紹介します。
込山智之(一般財団法人進学基準研究機構 CEES) 野澤雄樹(ベネッセ教育総合研究所)
GTEC CBTの運用を支えるICTと測定理論 【講演資料ダウンロード】
GTEC CBTは英語4技能を測定するために開発されたコンピュータ・ベースのテストである。グローバル化に伴う大学入試改革において,入学者選抜で活用する大学が増えている。GTEC CBTの運用を支える2つの柱は,テストを安定的に実施するためのICTと,項目反応理論をはじめとする測定理論である。本発表では,GTEC CBTの運用全般について概説したうえで,ICTと測定理論が果たす役割と重要性,今後の展望について情報提供する。
仲村圭太(公益財団法人 日本英語検定協会)
大規模英語テストにおけるアイテムプール拡張と管理・運用について
日本の大学入試は高大接続を焦点に改革が進みつつある。特に英語に関してはグローバル人材の育成の観点から中央教育審議会高大接続部会においても大学入試における外部試験の活用が検討されている。またテスティング及び言語テスティングの観点から、事前の予備テストを行い、出題する問題の難易度等に関する情報を取得し、アイテムプールを作成することが望ましいとされている。今後英語テストの結果が様々な用途へ使用されるのに伴い、アイテムプールの拡張と管理・運用を適正に進めることがこれまで以上に求められると考えられる。そのため、今回は英語検定協会が問題開発・実施運営を行っている英語テストをベースにして、現状の問題作成及びアイテムプールの管理・運用に関して検討を行う。a ) 優良アイテムを作成するための工夫、b ) アイテムバンクの具体的な作成方法、c ) テストの構成方法、d ) テスト問題の管理、e ) テスト実施方法、f ) テスト実施後の評価、等のポイントから現状の運用を記述し、更なる改善点を洗い出す。
仁田善雄 齋藤宣彦 石田達樹 島谷一芳 江藤一洋 (公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構)
医療系大学間共用試験の特色 【講演資料ダウンロード】
医学系・歯学系の大学は,2005年12月から臨床実習開始前の共用試験を正式に運用している.共用試験は参加大学が会員となっている組織である.良質な問題を参加大学の教員が作成し,試験を参加大学が実施し,問題作成と異なる人による問題評価・成績評価を行う試験である.Peer reviewが基本となる.
共用試験にはいくつかの特色がある.
1)アイテムバンク:毎年参加大学の教員が多くの試験項目を作成することから,他の試験に比べると新作の問題数が多く,良質のアイテムバンクの構築が可能となり,新陳代謝を多く行うことが可能となる.新作問題の評価にはプール問題と新作問題を同時に出題して評価を行っている.
2)良質な問題の作成:作問マニュアルと作成ツールの配布,問題作成のための説明会の開催,参加大学独自の説明会の実施と問題のブラッシュアップ,大学側からの要望に基づく,問題作成ワークショップのための講師の派遣(歯学系),参加大学から選ばれた委員による集中ブラッシュアップ(グループ作業)などを行い,多くの教員が何回も個々の問題の評価を行っている.
3)試験実施:テスト会場,試験監督,試験システムの運用は参加大学自身が行い,他大学の教員がモニターとして試験の評価を行う方式で行っている.
4)試験方式:臨床実習開始時期が大学により異なることから同一時期での単一フォームの試験を行うことが不可能である.そのため,受験生ごとに異なる問題セットで行う試験となっている.再試験も行うことから,同一個人に異なる問題セットが出るようにシステム制御を行っている.
5)成績などのフィードバック:会員が参加大学となることから,参加大学への成績返却,テストデータの解析結果の提供,テスト理論についての専門家による講演会の開催,テスト理論の説明文書・用語説明・パンフレットの提供,そして,受験生個人については,個人成績表の提供と試験全体の成績などを網羅した冊子の提供を行っている.
共用試験は,会員である参加大学の多くの教員の努力により成り立っている.会員お互いが評価し合い,良好な試験にするために改善を繰り返している.今後,教員の負担軽減も含めたより精度の高い適切な試験を展開していく事が検討されている.
開催日時:9月8日(木) 午後
高大接続入試改革の概要と課題 【講演資料ダウンロード】
講演:鈴木寛(東京大学公共政策大学院教授・慶應義塾大学政策・メディア研究科教授)
指定討論者:
企画者:森本康彦(東京学芸大学)
開催日時:9月9日(金)午後
【総説】
森本康彦(東京学芸大学)
eポートフォリオ/学習記録データを活用したアクティブ・ラーニングの学習評価
近年,テストだけでは測ることができない学習者の継続的なパフォーマンスから資質・能力を学習評価することが強く求められるようになった。特に,学習者の主体的な学び,いわゆるアクティブ・ラーニング,の学習評価法の確立は,文部科学省が掲げる重要課題の一つとなっている。
eポートフォリオに頼らないパフォーマンス評価は,既に初等中等教育に限らず大学教育のなかでも多く用いられているが,授業が終わってしまうと,学習プロセスで生成される多くの学びの記録は消え去ってしまうため,この学習評価には限界があった。一方,近年の情報技術の進歩と情報通信ネットワークの整備やタブレット端末の普及により,あらゆる学習エビデンスをeポートフォリオ/学習記録データとして蓄積・活用できるようになり,学習評価の実行可能性が高まったと言える。
本発表では,eポートフォリオ/学習記録データを活用した学習評価の最前線について紹介する。ここでは,総説として,アクティブ・ラーニングの学習評価デザイン・パターンについて紹介し,主体的な学びにおける学習評価の本質について述べる。
【初等中等教育セッション】
鄭谷心(東京学芸大学)
汎用的な資質・能力を育成するためのパフォーマンス評価
近年,変化の激しい21世紀社会に生き抜く学習者像を想定し,汎用的な資質・能力を育成するための学習評価が学校現場において重要視されるようになった.その中で,特に注目を浴びたのはパフォーマンス評価である.パフォーマンス評価は,「真正の評価」の代表的な評価方法であり,創造的な教育実践が育む本物の学習者像を映し出す学習評価という意味が込められている.本発表では,パフォーマンス評価の具体的な方法として,多元的・高次な学習者像をとらえる際に用いる「ポートフォリオ評価」や「ルーブリック」の理論と実践を紹介する.
宮澤芳光(東京学芸大学)
項目反応理論に基づくアクティブ・ラーニングの学習評価
近年,OECD の「キー・コンピテンシー」や我が国の「思考力・判断力・表現力」等の汎用的な資質・能力の育成と評価の確立が急務となってきている.この達成には,多様な資質・能力を統合して活用することが必要なアクティブ・ラーニングに代表され,学習者の主体的な学びの学習評価が求められている。しかし,学習者が学習に取り組む過程で必要な学習エビデンスを収集し.形成的評価を繰り返し,そして統括的評価を行うことは容易なことではなかった。そこで,本研究では,アクティブ・ラーニングの学習場面ごとに学習者のeポートフォリオ/学習記録データを蓄積・活用することで,課題遂行時に,項目反応理論を用いて学習者が発揮した資質・能力を評価し,資質・能力値をリアルタイムに推定する手法を提案する。なお,本研究は,東京学芸大学次世代教育研究推進機構第二部門の研究成果である。
【高等教育セッション】
田中洋一(仁愛女子短期大学)
大学の授業におけるeポートフォリオを活用した学習評価
短期大学にて開講しているプログラミング科目,キャリア科目,ジェネリックスキルを身につける科目等において,どのようにeポートフォリオを活用してパフォーマンス評価をしているかを紹介する.特に,ある科目の期末課題として1年前期におけるショーケース・ポートフォリオを作成させ,学習成果を自己評価させている事例にもとづき,eポートフォリオを活用した学習評価について考える.
宮崎誠(畿央大学)
eポートフォリオを用いた大学教育の質保証
学校教育法施行規則の一部改正公布(2016年3月31日付)により,3つのポリシー(DP・CP・AP)の策定・公表の義務化が確実となり,大学において喫緊の課題となった.大学教育の質を保証する上で,これら3つのポリシーについて学生の学習成果をエビデンスとして示すことが有効な方略の一つであり,eポートフォリオを活用することで,どのように大学教育の質保証を実現できるか考えたい.
【パネルディスカッション】
登壇者全員によるパネルディスカッションを行う.
企画・司会:益川弘如(静岡大学)
開催日時:9月9日(金) 午後
話題提供:
指定討論者:
企画者:服部 環(法政大学)
開催日時:9月9日(金) 午後
受験者の学習改善を目的としたとき,テストの合計点もしくは1次元性を仮定した項目反応モデルに基づく特性値をフィードバックするだけでは,十分とは言えない。そのため,近年では,個々の項目に正答するために必要な知識や理解力の関係を積極的に利用して受験者の認知的な診断を行う測定モデルが注目されている。そこで,本邦において,そのような認知診断を行うモデルを運用し,また,認知的な診断を行うために有用な情報や測定技術を創出する研究に携わっている方々が最新の研究成果を発表する場を設けることに意義があると考え,本セッションを企画した。
話題提供:
指定討論者: