ごあいさつ

比較的新しく設立されたテスト学会も,今年帝京大学で開かれる大会で12回目となります。学会としての幼児期は過ぎ,青年期に達したとも言えます。青年期は第2の誕生期と呼ばれます。テスト学会も青年らしく新しい地平を開くために,会員の集まる大会が,今後の新たな成長のきっかけになるような機会になってほしいと願っております。

テスト学会は,言うまでもなくテストに関する,理論的実証的研究や,社会に役立つ実践のための学会です。テストに絞ったという意味で,日本でも珍しいタイプの学会ですが,関連すること,やるべきことはたくさんあります。テストができるまでに,設計,開発,頒布のプロセスがあり,また,テストを使うにも,実施,採点,評価,結果の分析のプロセスがあります。また,テストが測定しようとする対象も,能力,学力,性格,態度,行動など多岐にわたります。これらの諸側面において,テスト学会が真に役に立つ知見を社会に提供することが,テスト学会の目標です。役に立つ知見の提供には,優れた実践的探究だけではなく,科学的な理論の深化と,厳密な実証研究も必要とされます。既存の情報科学や統計学の先端的発展をテストという実践の場から応用するという方向性も大事ですが,テストの開発や適用の場から重要な理論的発展も起こります。テストが新しい理論や技法が発展する場になるのです。

今回の大会のテーマは,「世界のテストの趨勢と日本」です。テストに関する世界の現代的状況を踏まえて,日本のテスト研究と実践を吟味してみようということがねらいです。そのために,4つのシンポジウムを用意いたします。シンポジウムのテーマは,「統計学とテスト」「キャリア支援のツールとしての心理テスト」「eテスティングの実際と今後」「認知能力テスト最新事情」です。

昨年度九州大学での大会のテーマは,「研究と現場を往還するテスト学」でした。本大会もこの方向性を踏襲し,大学,高校,中学などの教育機関,企業,公的組織など,テストを必要とする多くの方の発表をお待ちしております。もちろん,テスト開発の理論や,テスト得点の分析についての創造的研究の発展も期待しています。

本大会は8月の末,東京の西部の多摩地方にある帝京大学で開かれます。東京都心からやや離れておりますが,新宿からは便利な位置にあり,宿泊の場所を選んでいただければ,それほどの時間はかかりません。実行委員一同本大会を意義あるものとするよう努力いたしますので,夏の終わりにぜひご参加いただきますようお願いいたします。

日本テスト学会第12回大会実行委員長
帝京大学文学部心理学科
繁桝 算男